石原軍団

列車の中をゴトゴト揺られて一人旅。ローカル線の上に乗っかって、線路に自分の身を委ねている。車両を繋ぐ連結部分のドア。その上には電光掲示板。丁寧に行き先を表示してくれている。でも、僕はそれを見ない。デジタル社会の申し子。それが僕。だけども、一度もそれを見ようとはしない。何故なら?理由なんかない。なんかワクワクしたいだけ。それが理由かな?

窓からは季節外れの太陽が、季節外れの紫外線を浴びせてくる。斜めに僕の顔を打ち、ジリジリと肌を焦がす。ひじを窓際にかけているので、実は熱くて仕方がないけど、なんせ席が狭いもんだから体勢の取りようがない。これに旅の自由を感じる。前の席の背中の部分。足掛けも用意されている。新幹線なんかには無いシステム。アナログ過ぎて斬新。リクライニングは後ろの席の乗客との勝負。早いモン勝ち。でも、やりすぎると視線がイタイ。なのでソコソコにしている。快適とは程遠い。でも、そんなものは求めていない。旅にそんなもの求めていない。こんなもんがジャスト。

さすがに山々を貫くだけあって、トンネルは異常なほどに多い。耳が空気を閉じ込めてしまって、変な感じ。さっきからずっとヘンな感じ。ニセのあくびなんかして空気を自由にしてあげようと、ずっと努力して来たけど、もう最後。これが普通になってしまった。なのであきらめます。放っておきます。トンネルのプレゼント。なんて自然に対して寛大なんだろう。許してしまえる今日のココロ。

 

そう言えば売り子が来ない。あっ、そうか、今僕が乗っているのは特急だから新幹線じゃないんだった。それに久々に気がついた。ずっと新幹線みたいな気分がしていた。だって景色なんかすぐに後ろの方に流されているし、旅と言えば新幹線って感じになってしまっている自分が居てたような気がする。イヤな感じ。

 

それにしても眠い。別に寝たいわけじゃなく、そんなに疲れているわけでもない。なのに眠い。こんなに自然を横にして移動していると、目の中に飛び込んで来るものはと言えばやっぱり大自然。あとは、小さな小さな民家の集まり。都会に生まれ育ったからってバカにしてるわけじゃないけど、やっぱり小さい。その小ささが羨ましかったりなんかする。でも、羨ましいからってそれが自分に合っているかどうかは別。旅なんてそんなもん。それが現実になればまた戸惑うだろう。だって、ほんの数日。数日だけのパラダイス。それだから最高かもしれない。ずっと住んでも最高かもしれない。それは僕には分からない。何故なら旅をしているだけだから。そんなことは深く考えたことはない。都会と言う満たされた部分の中で生活して、ほんの充たされないパズルの何ピースかだけを埋めてもらっているだけなのかもしれない。今考えると。でも、そのピースがないと河も空も山も森も、大事な自然の景色が完成しない。だから、僕は長時間ピースのかけらを探してしまっている自分に気づくと、すぐに旅に出かけたくなる。やっぱりビルとか道路とかよりも、自然の部分に魅力が在るから、そこのピース探し出すと開放して欲しくなる。それが過酷でも、キケンでも、やっぱり船なんかの上に居る自分が在る。今もちょうどそんな感じのそんな瞬間。

 

うっかり眠ってしまったので、景色の流れを全部見れたわけじゃない。中抜けな部分も多少在る。今ようやく目が覚めた。何処なんだろう?いったい自分は今日本の上のどの場所を駆け抜けているのだろう?それが無性に知りたくなった。そんな僕を自然が圧倒してくれた。

トンネルを抜けた瞬間、窓の中に映し出されたのは大きな海。青?色には無い色。やたらと美しい。美しいと言うと繊細な感じがするのでやめておこう。やたらと力強い。今は十一月だと言うのに、本当に季節外れの太陽が照りつける波のスジ。水平線と空の境目が無い。余りに一瞬の出来事だっただけに僕はおもわず声を漏らしてしまっていたかも知れない。それぐらいに衝撃的だった。こんなに空がキレイで海が大きいなんて知らなかった。ホントに日本なのか自分の目を疑った。目の機能を疑った。絵や写真や映像なんてレベルじゃない。全てが今目の前に在る。これだけは疑いようがない。脱帽かな?とりあえず笑っている自分に気がついたので、笑い話にしておこうかな?この感動と衝撃は誰にも言わない。言ってたまるかって感じ。ようやく僕がたどり着いたんだから。この景色に。悪いけど独り占めしよう。

 

海の周りを列車の流れは半周した。そして海の側を離れた。だけども、僕はその間中ずっと海に目を奪われていた。思わず絵を描きたくなってしまった。そんな感じの風景。空の層を見た。何重にも重なるグラデーション。虹みたい。それが正直な感想。地球が球体だなってことにも再認識できた。何故か丸く見えたから。とにかく透き通っていた。何色かは聞かないで下さい。答えられませんから。僕の引き出しの中には無い色。表現できません。例え何万色と言う色の絵の具を混ぜたとしても作れないでしょう。だから、写真にももちろん写りません。人間が創った色じゃないし、だからそんなもの僕らが作った技術では表現しようもない。観たいならこの場所に来る以外に方法はないでしょう。それぐらいアナログな手段。だから余計に凄まじい。たどりついた達成感。これは、大好きな女の子をオトせた時に似てるかな?いや、それ以上かもしれないな。

 

確かにそれ以上かも知れない。

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