トビラの向こうに

夢を観ました。昨日は確か十二時過ぎには眠ったはず。そして、深い深い眠りの後に夢を観ました。それは、とてつもなく過去の夢で、きっと人類なんかまだ始まってなかった頃の夢のようでした。深い眠りから浅い眠りへと、移り変わるのが怖くて、怖くて必死に目をつぶっていました。怖くて仕方が無い瞬間を幾度も経て、そして僕は夢を観続けました。

 

階段の果てに見えるのは君の姿。その姿はどんどんと僕に近づいてくる。そして、僕も慌てて君の方に駆け寄って行く。何故だか理由は少しも分からないけれど、君の方に近づく僕。後数十センチで君に触れられる。そう思った瞬間、僕は君とぶつかった。ひどくぶつかった。覆いかぶさる僕。覆いかぶさられる君。僕は目の真下に居る君をじっと見つめている。愛しいとか、恋しいとか、そんな感情はちっともないけれど、ただただ君を見下ろしている。その刹那、何を考えればいいんだろう?なんて言えばいいんだろう?そんな事ばかりが頭をめぐり、少しも懐かしさの気持ちを吐き出せない。ずっとずっと、君に会いたかったのに、そんな気持ちは全く伝えられない。僕のココロの中をグルグルと泳ぎだす言葉たち。

 

次の瞬間、僕の目からは涙。一粒の涙。それが君の頬の上に滴り落ちる。君の頬を自由に流れる。そのまま変わらない気持ち。変わりたくない気持ち。生きて来た中で、生きてきた時間の中で一番落ち着ける場所がそこには在った。もう何処にも動きたくない。この場所とこの時間を独占したい。ウソでもなんでも信じていよう。このままだったら、こんな僕でも報われたまま死んでいける。そんな事を考えている。早くしないと君がまた、いつものように遠い場所に帰って行ってしまう。早く言わないと。早く伝えないと。今まで、僕が考えてきた事の全てを。早く伝えたい。でも、口から言葉を創り出すことは、明らかに不可能に思えた。君の意思無しに、僕はこの状況に留まりたい。どうか、願いを叶えて下さい。やっと、この瞬間に巡り会えたのです。苦しい壁を幾多も乗り越え、やっと巡り会えたのです。

 

どうやらその願いは叶い、僕は夢の優しさに包まれたまま、昔の様な時間を過ごしている。きっと、何も気づかずに粗末にしてしまいそうなくらい儚い時間を。君の声も顔も何も変わってはいない。まさしくあの時のまま。それが僕には何よりも嬉しい事なのです。こんなに最高の夢に巡り会える事なんてあるのでしょうか?と思うくらいに、平和で穏やかで、手放し難い時間に君と僕。昔と何も変わらない君と、昔と何も変わらない町並みを歩いている。言葉は一言も発さない。それでも、なんだか分かり合えている気分。それが最高の気分。今までで、最高の気分。どうしてこんな気持ちに気づかないまま、僕はあれもこれもを捨てて来たのでしょうか?矛盾の果て。どうやらそうみたいです。まさに矛盾の極み。

 

きっと、もうどうでもイイでしょう。細かい事は全て忘れましょう。とにかく消えてしまいそうな今を、精一杯の感情で楽しみましょう。だから、僕は楽しみます。いつ消えるか分からない不安を抱きながら・・。

 

全てがあの時のまま。なんて落ち着けるんだろう。やっぱり僕にはココが相応しいんだろう。こんなにしっくりくる環境。今まさにその真っ只中。君が隣に居て、君の声も隣に在る。信じようと思っても信じれない。あんなに長い間待っていた時が、今僕の手の中にあるんだから。

 

どうだろうか?君以外のガラクタも全てあの時のまま。装飾品?それとも、オブジェ?どうだっていいけれど、祝福にも似たガラクタ。今日だけはガラクタで居て下さい。ホントに何もしていない。さっきからずっと。何もしていないのにこの充実感。気持ちの中では、昔のまんま、あの時のまんまのコトをしたいのに、体もココロも何も望まない。ただただじっと、じっとしている二人。もったいない?きっとそうかも知れない。儚い時間を何もせずに過ごしているんだから。でも、それで充分。何も必要とはしない。

 

夢特有の淡さはそこには無く、手に取る物全てがリアル。リアルに感じられ、リアルに僕の触覚をくすぐる。君も果たしてそうだろうか?自己を主張している場合ではない。早く共有しないと、このまま君は遠い所に消えてしまうんだから。君にこんな感情を持った事は無いけれど、すごく愛しい。抱きしめたい。それは愛情表現の一種なんかじゃなく、君を放したくないから。ただそれだけの理由。なので、抱きしめようとするけれど、体もココロも望んじゃいない。だから、じっとしていよう。

 

もう満足したでしょうか?僕のココロは。満たされる事の無かった、僕のココロはもう満足したのでしょうか?遠くで誰かの声が聞こえる。確かに、夢の中よりも確かな所で誰かの声が聞こえる。凄まじい程の嫌悪感。その声の主は分からない。もしかしたら・・。気づけば君が居ない。僕の隣に、ほんの数秒前まで居た君がいない。君がいない事実。とてつもなく悲しい。だけど、後悔とは非なる感情。どうやら消えてしまったみたいだね。君は。でも、それでイイ。それがイイ。その方がイイ。正解と言うか、答えはそれ。やっと辿り着いた。人々が求めて止まない、答えの正体。ああ、なんて快感。相変わらず、遠くの方で声がする。君が消えて行った方向とは全く別の方向から聞こえる声。それは同一線上ではなく、別次元。異次元。そこからの声。まだ、止まない嫌悪感。そろりと僕は歩き出す。この世界から離れたくないけれど、仕方のナイこと。さらに僕は歩いている。気持ちとは逆に歩いている。歩いて行く。君のコトは忘れたフリ。でも、それが答え。悲しいけれど、辿り着いてしまった答え。

 

僕は目の前に在る、現実と言う名のトビラを開けて、暗く澱んだ世界に再び身を投じた。

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