ラインを越えて

そのラインを越えて、そのラインを越えてしまうのがとても怖かった。そのラインを越えた瞬間に全てが終わる気がした。今居る自分も、昨日の自分も、楽しかった思い出も、悔しかった思い出も、つらかった事、悲しかった事、不安、希望、それらの全てが消えてしまう気がした。もしかしたら、最高の未来が開けたかも知れない、その瞬間に。きっとそのラインはとてつもなく狭いモノだったに違いない。唇二つ分かも。いや三つ分かも。もしかしたら地球半周分くらいだったかも知れない。でも、越えられない自分がそこには居て、そのラインに恐怖を覚えた自分が居たのも事実。そんな境界線、いつだって越えるつもりで生きてきた。なのに越えられなかった。寂しかったけど、安心した。そのラインを越えた後の自分を想像すると怖かった。きっと、何もかもが怖かった。全ての言葉と、全ての期待。不安が押し寄せてきたら潰(つぶ)される。潰されるくらいなら笑っていたい。だから、越えなかった。越えれなかった。

 

何故(なにゆえ)用意された時間だったのだろう?果たして・・。

 

もう忘れよう。あの日の自分。あの夜の自分。

 

越えて見たかった。一生に一度のチャンス。全てが手に入ったかも。全てがいい方向に動き出したかも。でも、想像の域は越えないし、現実とは一線を隔(かく)す。何もかもに期待した。でも、でも、裏切られた人間も見てきたし、自分もその内の一人。何も分かってくれなくていい。別に分かって欲しくもない。ただ、ただ、そのラインを越えれなかった自分が、そこには在(あ)った。未来が消えるのが怖かった。だから、きっとそのラインを越えて迎えに行くことは出来ない。

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