わるもの

薄く開いた窓から、緑の匂いを連れた風が吹き込む5月の昼下がり。ブロンドの髪色をした母親と6歳の娘ステファニーは、仲良くソファに腰かけ、ゲームを楽しんでいた。
「ステファニー、このお花の花言葉はなにかな?」
母親は手にしたカードを娘に見せながら微笑みかけた。カードには赤いチューリップが描かれてある。
「愛のこくはくぅ」娘は答える。
「せいかーい! じゃあ、この花言葉は?」
次のカードには、可愛らしい花姿をしたカンパニュラ。そんなの簡単だよと言わんばかり、カードに視線を移した瞬間、「せいじつぅぅ」と答えた。
「はい、せいかーい! さすがステファニーちゃん。お花、大好きだもんね」
娘は母親に褒められたことで得意げになり、次の問題を急かした。
「では、ステファニーちゃん。この花言葉はわかるかな──」
「わるもの」娘は母親の出題を遮るように、反射的に答えた。
想像もしなかった娘の回答に戸惑う母親は、カードを娘の顔に近づけながら、「ん? まだ覚えてなかったかなぁ? よく見てごらん。この赤いお花はバラだよ。バラの花言葉は──」
「わるもの!」娘はムキになった。
「急にどうしちゃったの? 間違えて覚えちゃったかな?」
「だってパパが出張のとき、いつも知らない男の人が家に来るでしょ。その人がいつも、このお花をママにプレゼントしてるから」
しょんぼりと肩を落としながら、「だから──わるもの」と、ひとり言のように呟いた。
それを聞いた母親は大きく舌打ちをし、荒々しく頭を掻きむしると、手にしたカードをその場に投げ捨てた。美しい花々が描かれたカードがあちこちに散らばる。母親は勢いよくソファから立ち上がり、ヒステリックに叫んだ。
「適当なこと言わないで!」
悪魔のような表情で激昂する母親に恐怖を感じた娘は、火がついたように泣き出した。それに追い打ちをかけるように母親は吐き捨てた。
「あの人がプレゼントしてくれるのは、真っ赤なガーベラよ!」

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