十一分間の奇跡

枯葉が一枚落ちて来る季節。たった一枚。それだけが落ちて来る季節。何を考えよう。頭の中は自分の、自分中心の考えでいっぱい。その中で何を考えよう。自分の想像が頭の中を散歩する。行き先は告げずに散歩する。頭の中はまるで宇宙のよう。何処をさまようのか?果てしなく渦巻く思想。限りなく巡(めぐ)る偶像。その真っ只中で頭が痛い。何故(なにゆえ)の痛みなのだろう?全てが分からない。道化(どうけ)は要らない。少しの道化も要らない。もう疲れた。明日には死のう。死が待っていると期待した方が、幾分(いくぶん)かは楽になれる。そう思おう。頭の中はその期待で埋めつくそう。きっと、明日は楽しくなるはずだ。せめて今日よりは。

 

季節外れの雨。何が目に映るのか教えて欲しい。それは、愛する人でもいい。愛される人でもいい。たった一言。たったの一言が欲しい。その一言が何かを生み、何かを伝え、僕を偽りの世界から開放してくれる。その中で何を考えよう。何かを考えよう。それが何かは分からない。

傘を打つ雨の音。とても楽しげ。雨の声を聴いていると心が落ち着く。落ち着いているように装える。その嘘、偽り、偽装、虚像、偶像、皆無(かいむ)、空白、それらが安堵(あんど)に落ち着く。なんて、気持ちのいい刹那(せつな)。バラバラに砕け行く快感。この瞬間は逃さないでいよう。たとえ、生涯最高のチャンスを逃したとしても。

道端に浮浪者を見つけた。なんて寂しく、なんて優雅な世界。自由。そこには確かにあって、価値観のレッテルは一枚も貼られていない。それが、自由?皆が追い求める自由?違うとしても否定はしないでおこう。否定する権限は僕にはない。たとえ君にはあったとしても、僕にはない。残りの光が彼だけに注がれるとしても後悔は、異論はない。光を乞い、光に飢えて来た僕だからこそ、後悔の念はない。それこそ皆無。皆無の極(きわ)み。いや。皆無ではない。白ではないからだ。白い体になりたかった。そして、目の前の大きな空に飛び込む。断(ことわ)りなき思想。

 

「ジュリエット。あなただけはその悲しみのない、潔(いさぎよ)いばかりの瞳を絶やさないで居てください。たとえ、この世が闇の彼方から救われて、救われた時に光が世界の全てを照らし出したとしても、あなただけは今まで通りの景色をその目に映し出してください。光はやがて人々の目をくらまし、犯罪と言う名の正直さや、誘惑と言う名の果実も映し出すことでしょう。そんな中でも、ジュリエット、あなただけは、その瞳を絶やさず居てください。見なくてもいい景色だってあるんです。知らないように。知れないように。僕は地の底からでも祈っています。それが、それだけが僕の使命です。例えば明日、死の希望に焦(こ)がされようとも、この地に生を受けたことは神から授かった唯一にして、至上のプレゼントと思い大切に育てて行くことでしょう。何もないように笑って居てください。何もなかったように笑って居てください。これからも。終わりなきその・・。」

 

取り急ぎのお願いは言いませんので、神様。慈悲(じひ)深いその愛しさが、本当にあなたの両腕に備わっているのなら、お願いを聞いて頂くことは出来ませんでしょうか?ささやかなお願いです。聞いてくださいますか?聞いてくださるのでしたら、恥ずかしげもなく、惜しげもなく、この卑猥(ひわい)な口から申し上げさせていただきます。

「どうか、世界に終わりが来ませんように。」

わがままなお願いだと言うことは承知しております。また、民間の眼差(まなざ)しを己の魂に注がせるような売名行為だととらえられる事も十重承知しております。しかし、心から願います。

「世界の全てが終わらないように」と。

聞いてくださいはしませんでしょうか?私はその願いが叶うその日が来るのなら、いっそ、この身を悪魔にでも差し出す覚悟は出来ております。どうか、どうか、そのご慈悲に満ち満ちた両腕、両掌で、願いをかなえてくださいませ。これは、人々の願いではありません。いたって、私個人の私利私欲に溢れた願いでございます。いわば単独行動です。恥ずかしい限りです。ヒーロー気取りなのかも知れません。罰を与えられても仕方がない行為です。反省して居ります。しかし、この願いだけはかなえてください。

「世界の全てが永遠に終わることのないように。」

 

あー、嫌いだ。自分が醜い。万能ぶっている自分が憎い。そして、自分のことを憎いと思って、気取っているその自分がまた嫌だ。憎い自分を気取っていると正当化して嫌っているくせに、実はそんな自分がまたかわいい存在だ、などと思っているその自分をそろそろ殺してやりたい。しかし、まあ、自分のことを殺してやりたいなんて言っている自分を文才の万能の切れ者だなどと高く評価しきって、芸術家ぶっている自分を地獄の業火(ごうか)で焼き尽くしたい。君は太宰治にはなれない。太宰治のコピーすらできていない。よって君は最悪にも似た程の下品な下等動物だ。そう、死んでしまえばいい。君なんか生きている価値なんてない。求められたことなどあるのか?君は。君なんか誰一人として必要としていないのだよ。分かるかい?無価値だ。一言で片付けるとしたならね。無価値なんて言葉はもしかしたら、君にはもったいないくらいの高尚(こうしょう)な言葉なのかも知れないね。いっそ、その天狗になった鼻をへし折ってみたらどうかね。全く気色の悪い。吐き気がするよ。君の顔を見ていると。死にたまへ。今日限りを持って、人間という身分を剥(は)ぎたまへ。そうすれば、恋をすることぐらいは認めよう。たった一つの自由を。たった一握りの自由を。嬉しいか?嬉しいかい?じゃあ、早くこの場で死にたまへ。私の見ている、この場で。

 

思想の巡る瞬間。全く持って、グレーだ。このグレーがたまらない。僕にシロやクロなんて要らない。在るのはグレーと紅(あか)だけ。これさえ傍にあれば幸せだ。空の色もグレーに染めてあげようか?そうすれば少なくとも、悲しみとは同化して、保護色となり、あなたは守れるだろう。救えるだろう。しかし、怖い。何が怖いかは言えない。それを言うと、それさえを言うと、私はこの場所から瞬時に消えてしまうことになるだろう?見たいですか?見たいんですか?塵(ちり)ほどの重みもない人間が目の前から消えて行くのを見てみたいですか?そうですか?あなたも大変変わった趣味を持った人間のようですね。それでは、消えてみましょう。この一(いち)刹那(せつな)の間に消えてみましょう。マジックじゃありません。さぁ、行きますよ。私の生涯恐れて止まない、恐怖の源とは・・。

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