惜しまれながら死んでいく、英雄に憧れて

「アンタってそんなに偉いんすか?」

「けっこう自分は偉い人間で、権力もそこそこ持ってて、誰しもが自分に従うって思ってるとこありません?」

「それってダサくないっすか?」

「自分の姿、鏡で見たこととかってあるんすか?」

「かなり醜いカッコしてますよ。」

「スーツをビシっと着てるからとか、ネクタイきちっと締めてるからとか、俺に言わせりゃそんなのただの甘えっすね。」

「アンタら、裸になったら何残るんすか?」

「みんなに自慢できるモン、持ってんすか?」

「そんなモンの一つや二つも持ってないくせして、俺らにエラソーにだらしないカッコするなとか言わんでくださいよ!」

「よっぽどアンタらの方がダサイっすけどね。」

「分かってます?」

「そこのハゲ頭!」

「おめー、会社とかで地位とかそこそこあるからって、イイ気になってんじゃねーよ!」

「たかが会社内での地位や名誉なんて、世間に出りゃクソみたいなモンだっての!」

「社長か部長か何だか知んねーけど、お前、今日の通勤電車で女子高生にクソおやじ扱いされてたんじゃねーかよ!」

「お前らなんて所詮世間に出れば、ただの油ギッシュなクソジジイなんだよ!」

 

「もっとカッコイイおやじになろうと思わんのかね?」

「年齢重ねりゃ、精神年齢も比例して成長する分けじゃないんすよ。部長さん、課長さん。」

「やっぱ、観て来たモンとか触れてきた価値観とか、景色やら匂いやら、全部ひっくるめてアイデンティティでしょ?」

「十五歳の少年だって、アンタらよりマシなモン観て来てるヤツもいるんすよ。」

「人間の道理で行きゃ、アンタら十五歳の少年に頭上がんないんじゃないっすか?」

「自分の歩んできた人生、後生大事に拝んでんじゃねーっつーの!」

「昔の自分がそんなに偉いのかよ!」

「昔の自分がそんなに尊いのかよ!」

「昔の自分はそんなに輝いてたのかよ!」

「昨日の自分も壊せない中途ハンパな野郎が、人の上なんか立てっこないんだよ!」

 

「謙虚な姿勢とか、勇ましい心とか、優しい気持ちとか、そんな事言ってんじゃないんすよ。」

「要は、自分を知れって事っすよ。」

「自分知るためには他人の評価なんか必要ないし、自意識過剰になる訳でもない。」

「アンタらバカだから分かんないと思いますけど。」

「自分見ようと思ったら、その腐った自分から飛び出さなきゃ話にならないっしょ。」

「まず、自分の目で外から、外の世界からその、ハエも寄り付かないよーなホラー映画顔負けの性格見つめ直しましょうよ!」

「エラソーな態度とか今日限りにしてさ。」

「心とか鍛えてます?」

「焼肉とか食って、ベルト緩(ゆる)めてる場合じゃないっすよ!マジで。」

「ほら、そのボンクラの頭でもウスウス理解出来てきたっしょ?」

「じゃ、俺らのカッコとか髪の毛の色とか、言葉遣いとか態度とか。」

「そんな事にイチイチ口出してるヒマないでしょ?」

「不潔丸出しの黒髪なんて、ズタボロに切っちまえよ!」

「世間の変化を、文化の進歩を自分の落ち着ける場所を確保するためだけに押さえつけるなよな!」

「アンタらの居心地のイイ世界は三十五年前に終わってるって。」

「馴染(なじ)む努力ぐらいしろよ!」

「こっちはアンタらの暴君ぶりに付き合ってやってるんだからさっ!」

 

「俺は誰が何と言おうと、このスタイルで行きますから。」

「ただし、めちゃくちゃ柔軟性在りますけどね。」

「誰かさんと違って。」

「イイもんはパクルし、真似だってするし、吸収力が違いますよ。」

「誰かさん達とは違って。」

「ガキの戯言(ざれごと)だって片付けられる前に一言。」

「嫌ってもイイけど、否定はすんな! もうアンタらの時代は終わったんだから! 荷物まとめてとっとと帰りな! タイムカプセル乗って! んじゃ、なっ!」

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