雨の音

雨の音がした。今は何時なんだろう。時間を忘れてしまう時がよくある。

 

昨日までは二人。今日からは一人。神様が一生に一度だけ願いを叶えてくれるんだったら、時間を戻してもらうように僕は乞(こ)うだろう。時間を戻したとしても、今日という日がまた訪れれば僕は一人の時間を誰とも共有しないで部屋にいることになる。でも、今はそんなことしか思い浮かばない。

 

「頑張ってね。」

 

その一言に僕は夢を追いかけ始めた。いくつの時だっただろう。決して夢に夢見てたんじゃない。人知れず努力もしてきた。そして、その努力も報われてきた。頑張って手に入らない物なんてこの世に無いと思っていた。きっと楽しかったんだろう、全てが。楽しいときは早く過ぎるなんてよく言うけど、もちろん時間の配分は平等で、昨日も今日も同じ時間の尺度の中で生きているはず。変わってしまったのは時間の重さ?

 

全てが順調だったのだ。夢を思い、そしてあなたを想い。そう、順調だったのだ。何も変わらないあなたがいて、変わり始めた僕がいた。順調な時に明日のメシの心配をする人間が何処(どこ)にいるだろう。例にも漏(も)れず僕もその内の一人だった。順調な日々に安心していた。

 

雨の音がしている。今は深夜三時半。僕は部屋で一人、誰にも見られないままに色を映し出すテレビの前。悲しい気持ち。切ない気持ち。恋しい気持ち。憂う気持ち。ノスタルジックな気持ち。懇願の気持ち。愛しい気持ち。懐かしい気持ち。全て違う。全然違う。あえて一言でかたずけるとしたなら、むなしい気持ち。そう、昨日の今頃あなたの放った言葉、

「頑張ってね。」

 

次は何を追いかけて行けばいいのだろう?

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